皆様にチェルニーコンクール開催のお知らせをします。
「チェルニー」と聞くと練習曲の代名詞のように感じて、機械的に音符を並べた人みたいに
思ってしまいますね。
でも1791年に生まれ、10歳でベートーベン先生に習いに行き、
少年時代は、モーツアルトやクレメンティの全作品を暗譜で弾き、
その腕前を買われてベートーベンのピアノ協奏曲「皇帝」のウィーン初演を頼まれています。
ピアノの先生は15歳ぐらいから始め、1日12時間ぐらいレッスンしながら、
夜は作曲して生涯に作品861まで残しました。弟子にはリストやレシェティツキなどがいます。
というわけで、ピアニスト、教育者、そして作曲家と多くの仕事をした才能豊かな人なのです。
ピアノ作品は練習曲以外のあらゆるスタイルがあります。
そこでこのコンクールは、チェルニー氏の練習曲以外の作品に注目し発掘して、
19世期の重要な作曲家として見直すこと、そしてその作品に仕組まれているテクニックも
身に付け、実力を上げようというコンクールです。
さらに”表現する”ということは、指が早く回ることやミスをしないことが1番大事なことではない、
という観点から、皆様の演奏をじっくり聴きたいと思っています。
チェルニーの多彩な作品を楽しみましょう。多数のご参加をお待ちしています。
(アトリエ・アッシュ 代表 秦はるひ)
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ピアノを学ぶ人にとって、練習する曲の数は学校や教室で勉強する作品だけでも、多すぎるくらいの数があります。
練習曲にソナタにノクターン、それにジャズやポピュラーアレンジ等など。
それに加えてさらに新しい曲に挑戦することに、ハードルの高さを感じる方もおられることでしょう。
何事でも、新しいことにチャレンジするよりは、慣れ親しんだもののほうが気楽です。
通常のピアノのコンクールは、過去の未知の作曲家や作品の発見をねらいとはしていません。
有名曲をいかに演奏するかという、表現や演奏技術に主眼が置かれているからです。
しかし、演奏の究極の目的が、有名曲で競い合って入賞するということにあるのではない、ということは、
昨今、多くの方が感じているのではないでしょうか。
演奏という行為の面白さは、私たちが社会の中で芸術活動に携わりながら、
主体的に音楽や音楽文化について考え、人々と同じ場所で音楽的な時間を共有することの中にあるはずです。
英国の音楽学者ニコラス・クックの言葉を借りるなら、それは「ともに歳をとる」ということです。
チェルニー・コンクールが提案するのは、いまから150〜200年ほど前に、
文字通りピアノに身を捧げ、途方もない数の仕事をしたチェルニー像を、参加する方々がそれぞれに発見し、
その場で共有するということです。チェルニーは、19世紀ピアノ文化を体現する象徴的な存在です。
ベートーヴェンに学びリストを育てたチェルニーは、先人から受け継いだ古典的スタイルを極め、
その器にロマン主義の詩情を乗せました。そして技巧面はもちろんのこと、
音楽全般的な視点からピアノ学習者を音楽的な高みへと向上させようという使命感のもとに、
教育・演奏・作曲に取り組んだのです。
私たちはまだ、チェルニーの一部の練習曲しか知りません。
しかし、交響曲、協奏曲、ソナタ、前奏曲とフーガ、作曲教本まで手掛けたチェルニーという人物を
さまざまなピアノ作品を通して再発見することは、
ピアノ文化に大きな足跡を残したチェルニーへのオマージュにもなるでしょう。
コンクールには、語源的に「同じ場所に集まる」という意味があります。「競う」こととばかりに捉われない学びと
発見のためのチェルニー・コンクールに、参加してみませんか。
(アトリエ・アッシュ 代表 上田泰史)